国際放射線防護委員会(ICRP)は、原子力事故による長期汚染地域に居住する人々の防護に関する勧告の中で、影響を受けた人々と地域の専門家が状況の管理に直接関わることの有効性と、国と地方行政が人々の関与と自律を促す環境を作り手段を提供する責任があることを強調している。
この観点から、ICRPは2011年秋に、福島県庁、地元の専門家、地域社会の代表者と、ベラルーシおよびノルウェー、フランスの組織の代表者らの間で、対話を開始した。
こうして2011年から2020年にかけて、福島原発事故後の放射能汚染地域での長期的な復興における日々の課題に対処する方法を探る、一連の「ダイアログセミナー」が開催された。
当文書は、その始まりとその後の展開について説明し、原発事故が発生した場合の事故後の管理の観点から、フランスを始め世界の国々が学ぶことのできる主な教訓に焦点を当てる。
この章では、ICRP主催により2011年に開始した、福島県庁、地元の業者、地域社会、国際的な専門家の代表者らが集まって行われたダイアログセミナーのプログラムを紹介する。その内容は、放射線防護の専門家と、自分たちの生活を取り戻そうとする福島の住民との間の交流の経験を伝える、2016年IRSN制作のウェブドキュメンタリーに基づいている。
2011年から2015年にICRPによる主催で行われたダイアログセミナー終了後、日本の地元の当事者グループがそれを引継ぎ、避難指示が解除されたか間もなく解除される地域の住民を支援する目的で、2016年から新たな交流が開始した。
この最後の章では、ダイアログの経験から得られる、原発事故後の管理に関する主な教訓を紹介する。
福島第一原子力発電所での事故により、放射能が環境中に拡散し、それが住民の日常生活における有害な要素となった。ダイアログから得られた経験は、放射線防護の実施は不可欠であるが、日常生活において遭遇するさまざまな問題を解決するのにそれが十分ではないことを明らかにした。